メイさんも安倍さんもお洒落だ!
ブリクジットがらみで辞任してしまったイギリスのメイ前首相は、もう本当に圧倒的にお洒落である。このことは以前から指摘されていて、ネット上で「メイ首相 お洒落」などと検索すると、鮮やかな水色のコートを羽織って颯爽と大股で歩く彼女の姿が真っ先に出てくる。いや、めちゃかっこいい。メイさんはおしゃれ番長なのです。
もっとも本国では、番長ならぬお洒落モンスターと呼ばれていて、毀誉褒貶半ばしているらしい。毀貶のほうは、たとえば、エリザベス女王に拝謁するにあたってニーブーツを履いていたり、首相就任式の際に豹柄のパンプスを履いていたりと、「ちょっとTPOをわきまえていないんじゃないの?」というものだ。そして非難はニーブーツだのパンプスだの「靴」に集まっている。なにしろメイ首相は、「この世でもっとも愛するものは靴」と公言してはばからない靴オタだ。だから、他者とは異なるこだわりがあるのだろう。
ところで――。わが日本の安倍首相も、なかなかお洒落に見える。もちろんスーツは仕立てのよいものだろうし、ネクタイやシャツ、靴も同様であろう。しかしそのあたりの服飾事情は、他の政治家とて同じだと思われる。にも関わらず、なぜ安倍首相がことさらにお洒落に見えるかといえば、偉そうなことを言って申し訳ありませんが、サイズ感やバランスがとてもよいのですね。いつもジャストサイズのスーツやシャツを着ているし(こんな当たり前のことができていない政治家がとても多いことに、遺憾の意を表したいのであります)、袖口から見えるシャツのカフス部分の長さや、シャツの襟の大きさとネクタイの結び目の大きさのバランスがとてもよいと思うのですよ。
ただ気になるのは、ときどきタッセルド・スリッポンを履いている点だ。安倍首相は、ちょうどVAN世代真っ只中だ。だからといって、安倍首相が外国の首脳に会うときに紐靴ではなくタッセルド・スリッポンを履いていたなら、さすがにまずいんじゃないか。メイ首相と同じく、靴プロブレムを引き起こしてしまうんじゃないだろうか……。て、まったくもって余計なお世話ですね。
思春期女子には、かっこいいロールモデルが必要
えーとすみません。なんの話をしていたかといえば、メイ前首相がとにかくお洒落という件でした。
ご存じの通り、メイ前首相はイギリス史上二人目の女性首相である。はじめての女性首相といえば、もちろんサッチャーだ。そして思い出してみる。というか画像検索してみると、サッチャー元首相はなんだか教師然としていて、とてもお洒落とはいえない。その点、メイさんはキャリアふうであり、そのビジュアルに、女子たちはプリミティブなレベルで憧れると思われる。
さて唐突ですが、ジャニーズ事務所の信念というか基本コンセプトは「思春期の女の子には綺麗な男の子(のアイドル)が必要」というものらしい。その伝でいけば、思春期の女子が自分の今後のキャリアに思いを馳せる際には、わかりやすいかたちでの「お姉さんロールモデルが必要」なのだと思う。
思春期の女子は、アイドルにも憧れるが年上の女性に憧れる。だから、かっこいい女性教師に出会えば自分も教師を目指そうとするし、それは女医や看護師、ショップ店員も同様だろう。そして、女子にとって一番身近なロールモデルはやはり母親だ。
この原稿を書いているとき、高校時代の友人から電話がかかってきた。たいした用件ではなかったのだが、僕のほうはこれ幸いと留学について聞いてみた。彼の娘さんは、高校時代に一度、大学時代に一度、それぞれ一年間の長期留学を経験しているのだ。
その友人の家では、娘にゆくゆくは留学させるということが規定路線だったのは以前から知っていたが、まったくその通りになった。なぜ既定路線だったかといえば、彼女の母親、つまり友人の奥さまが英会話の先生だからだ。娘さんは、母親を見て育ったからこそ、留学するのは当たり前と考えるようになったし、また一家には当然、留学に関する情報はたくさんあった。実際、高校生のときに留学した際にはホストファミリーと合わず、母親が乗り込んで(?)問題を解決したのだという。そういうことができるのも、事情に通じていればこそであるし、彼女からすれば、母親が頼もしく見えただろう。そして現在、彼女は母親と同じく、英会話教師兼日本語教師をしている。母の影響力、おそるべし、である。
ところで、今も昔も、とくに女子の間では医療関係の仕事が人気だ。もちろん手堅い仕事、一生できる仕事という側面もあるだろうが、やはり、医療関係者が身近にいる(可能性が高い)ことが背景にあるのは間違いない。母親が女医だったり看護師だったり薬剤師だったりするケースも多いだろう。
医師の家の子は医師になる可能性が高いのは事実だ。医学科は勉強量勝負であるから、それだけの環境が用意できる経済力ということもあるが、医師であるところの「親の背中を見る」ことができるのが大きい。そして女子ほど、女親の背中を見る。
もちろん男子も父親の背中を見るには見るが、しかし男子が見すぎてしまうとやっぱり気持ち悪い。あくまでも父親はライバルだからである。結果的に父親と同じような職業に就く男子も多いのだろうが、それは、その仕事に関する情報が多かったり、またコネクションがあったり、そうした「背中」以外の要因が多いと思われる。その点、女子は直截である。それは、母親以外のお姉さんロールモデルについても同じことが言え、だからメイ首相は憧れの対象になる。
一番身近なロールモデルは当然……
ただしここで現代的な問題が発生する。例の
子どもたちの65%は、大学卒業後、今は存在していない職業に就く(キャシー・デビッドソンニューヨーク市立大学教授)
今後10~20年程度で、約47%の仕事が自動化される可能性が高い(マイケル・A・オズボーンオックスフォード大学准教授)
という、よく目にする2点セットの、子どもたちの未来についての予言ならぬ予測である。
これは、職業ロールモデルとしての親の背中が半分方消失してしまうということをも意味している。一方で、前述したように女子は身近なロールモデルを求めるから、相対的に年齢の近いロールモデル、つまり通っている学校の卒業生などの存在感が大きくなり(先輩なら、その時点で消失していない仕事に就いている)、このあたりも学校選びのひとつのポイントになるようにも思う。
だからといって保護者の役割が小さくなるということはまったく、職業ロールモデルとはまた別のかたちで、子どもの人生にこれまでよりもより深くコミットしなければならなくなるだろう。私たち保護者が、とりあえず対処しなければならない新テストである。
新テストを考慮に入れたとき、学校選びにしても、私立一貫校の場合はとくに、単に偏差値だけでない評価軸――先進性、国際性、多様性などの吟味が必要となるし、各校のアクティブ・ラーニングがどのようなローカルルーブリックに基づき、どのようなスタイルで行われているのか、それが新テストと「その先の未来」にどのように作用するのか、わが子とのマッチングはどうか、といったことについて、保護者が情報を集め、判断していかなければならない。
また新テストにおいては英語がポイントとなるのはご存じの通りだが、4技能検定のうちスピーキングとヒアリングはいつはじめてもいいものだから(早ければ早いほうがいい?)、ここにも保護者の教育戦略が問われる。各種の外部テストも、TOEFL、IELTS系でいくのか、英検なのか、はたまたTEAPなのか。これは留学を視野に入れるか、あるいは志望大学によっても変わってくるし、一方、高校では一律、英検かGTECだったりするから、このあたりのことも保護者がジャッジしなければならない。
さらに現在、「体験」の重要性がさかんに言われているが、習い事や部活動、家族のレジャー、塾での体験教室などなどを「交通整理」することも、保護者の重要な役割となるだろう。こうした局面で、とくに、女子に対する母親の役割に着目したい。思春期の女子にとって、母親の影響力は、おそらくジャニーズアイドル以上に絶大だからだ。
女子の「伸び期」は小学校中~高学年だといわれるが、それまでに母親と、たとえば読み聞かせなどでいい関係を築いていれば、母親が勉強にコミットすることで――決して教育ママ(死語)になるのではなく――その伸び幅をマックスにすることができる、どころか、奇蹟を起こすことさえできるという。
お母さま、出番ですよ!